網走監獄博物館に行ったら、立っているのが人間なのか人形なのかわからなくなった【網走】

北海道、網走にある「博物館 網走監獄」に行ってきました。

この日はお付き合いしている彼女と二回目の旅行デートだったのですが、なぜ網走監獄に行こうと思ったのか正直全く覚えていません。
小学校の修学旅行で一度行った記憶があったので、なんとなくもう一度見たいと思ってしまったのでしょう。

網走監獄博物館ですが、実はこの場所に建っていたものではありません。

現在の網走刑務所を全面改築する際に、貴重な建築物の数々が失われるのを危惧した網走新聞社(現在はありません)社主の佐藤久が保存を提唱し、賛同した市や北海道が協力して設立した財団法人によって移築復元されたものなんです。
参考:博物館網走監獄 – Wikipedia

実際に網走監獄が作られたのは、明治23年。
当時、人口631人しかいなかった網走になぜ監獄が作られたのか。
それについては公式サイトで語られていますのでご覧ください。
北海道集治監の誕生と網走監獄 – 博物館網走監獄

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博物館 網走監獄の施設をじっくりと見て回る

到着する前からかなり強い雨が降っていてどうしたもんかと悩んだものの、監獄というぐらいだから建物の中がほとんどだろうと安易に考えて向かうことにしました。

車を降りても雨は一向に止む気配がなく、駐車場に置いてあった貸出用の傘をさして受付へ向かいます。

レンガ造りの正門(通称:赤レンガ門)の前には、雨の中看守がお出迎え。
憂いを帯びたヒゲの表情がなんだか少し色っぽい。
ここが一番記念写真が撮られている場所です。

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伏目がちなイケメンのヒゲ看守がお出迎え。

正門の中には、受刑者との面会にやって来た人用の待合室があります。
面会の申し込みを済ませるとこの部屋で待ち、許可が降りると看守に連れられて所内に入りました。

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面会室でじっと佇むお婆ちゃん。待っているのは旦那か息子か。
こんなところで家族を待たせてはいけません。

登録有形文化財に指定されている和洋折衷が特徴の庁舎

ここは刑務所の中心となる建物で、刑務所長室をはじめ、総務課や会議室などが設置されました。

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洒落た学校のような、レトロな雰囲気が格好いい。
入り口の前に立っているのは人間です。

庁舎の中にはミュージアムショップを併設
いろいろなお土産がありますが、他に産業物産館というしっかりとしたおみやげ屋さんがあるので、ここでは買わなくていいかも。

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真ん中に立っているお兄さんは人間?それとも人形?

面会所で家族と面会をしている様子。
受刑者の隣にはぴったりと看守がついて記録をとっています。

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奥さんに、「迷惑かけてすまねえ」とでも謝っているのか。

こちらは典獄室(てんごくしつ)
典獄とは刑務所長のことなので、今で言うところの刑務所長室ですね。
ご飯を食べているように見えますが、これは検食(けんしょく)といって、受刑者に出す食事の味や量をチェックしているところ。

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こちらの典獄室ですが、現在は改修されてガラスが外されたそうです。

網走刑務所の裏門

網走刑務所の裏門にやって来ました。
受刑者が作業場に出かける時に必ず通っていたのが、このレンガでできた裏門です。
息苦しい監獄から外に出ることができる唯一の出入り口だったようですね。

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大正8年に着工し、受刑者がコツコツと積み上げて大正13年に完成した。

網走刑務所の水門
網走刑務所の前に流れている網走川を利用して、物資などを運び入れていました。
これはイカダに乗せて肥溜め(肥料にするおしっことウンチだよ)を農場に運んでいる様子を再現しています。

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看守を突き落としてこのまま逃げようと思った受刑者もきっといたはず。

釧路地方裁判所網走支部法廷

復元移築された、釧路地方裁判所網走支部法廷
ようは裁判所の網走支部ですね。
旧庁舎を取り壊す時に、単独法廷・合議法廷・合議室・仮監置室・勾留質問室を移築復元しています。

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建物が新しく見えるのは移築じゃなて、外観を再現したものだから。

単独法廷の様子。
比較的軽い犯罪を裁判官一人によって審理します。
一番奥に座っているのが裁判官ですね。

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机、椅子、カーテン、照明は全て実際に使われていたモノ。

こちらは合議法廷の様子。
重い犯罪の時には、裁判官三人によって審理します。
奥さん、一体なにやったんだ?

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後ろの椅子に座って見ると、実際に傍聴人になった気分を味わえる。

仮監置室だった気がする。
自分の裁判の順番が来るまで待っている部屋です。

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どう見ても万引きしたおばちゃんのように見える。

休泊所

別名:動く監獄と呼ばれた休泊所(きゅうはくじょ)
受刑者が塀の外に出た作業で、日帰りできない時に寝泊まりする仮の小屋。
主に札幌から網走までの道路工事に受刑者が投入されたときに使われました。

枕は一本の丸太になっていて、起こすときには端を木づちでぶっ叩いて起こしました。
逃げさせないような作りになっており、この形がタコ部屋(強制的な肉体労働)の元になっているそうですよ。

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天気が悪かったから薄暗く、とても不気味に見えた。
一人ぐらい起き上がってきてもおかしくないリアルさ。

刑務所職員官舎(通称:看守長屋)

刑務所で働く職員と、その家族が住んでいる住宅です。
昭和のキッチンなど、リアルな様子を見ることができます。

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亭主関白な昭和のオヤジといった感じのお父さん。

馬の蹄を作っている様子。
ここの他に醤油や味噌、漬物を作る蔵などがありました。

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「カンカンカン」と聞こえてきそうな作業風景。
近くに行くと突然動くので結構びびる。

行刑資料館

様々な資料が展示されている行刑資料館
現在の網走刑務所の様子がそのまま再現されてます。

行刑資料館の中には、道路開削工事の様子を5分30秒の音と映像で楽しめる体験シアターがありましたが、海外の団体客や学生さんたちで大混雑していたため断念。

こちらは共同室
16畳半の広さに原則として6名が収容されます。
布団、棚、タオル掛けなどは各自で管理。

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一見修学旅行みたいで楽しそうだが、看守によってしっかりと監視されている。

4畳半の単独室
テレビもありなかなか快適そうですよね。
ご飯がリアルに再現されていました。

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立てかけられていた木のついたての奥がトイレ。
デリケートな人は便秘になっちゃいそう。

単独室を外から見た様子。
受刑者が熱心に本を読んでいます。
写真がリアルすぎて本当に人がいるのかと一瞬驚きました。

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リアルでドキドキする

高倉健主演映画、網走番外地のポスター

「網走番外地」はシリーズは10作、別監督が撮影した「新網走番外地」がシリーズ8作公開されています。
その他のキャストは、丹波哲郎、田中邦衛、南原宏治、嵐寛寿郎など。
ちなみに、網走番外地の監督をした石井輝男の石碑が、博物館網走監獄の正門前に建てられています。

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古い映画なので実際に見てはいなが、当時は映画館を出ると高倉健になりきる人が続出したほど。

道路などの工事現場に連れて行かれる受刑者たちの様子。

頭に編笠(あみがさ)を被せられ、手には手錠。
さらに、万が一逃げ出さないように受刑者同士がロープで繋がれます。
そばでは腰にサーベルをさした看守がしっかりと見張っています。

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逃げた途端にサーベルでバッサリいかれそう。
うまく逃げ出せたとしてもうっそうと生い茂る森の中ではどうすることもできない。

二見ヶ岡農場作業

網走刑務所は農園刑務所としても有名で、北海道の広い土地を有効活用した農場では様々な作物が育てられていました。
一見楽しい農作業のように見えますが、奥にある見張り台でしっかりと監視されています。

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遠くから見ると、「ご苦労さまです」声をかけそうになるほどリアルな人形たち。

登録有形文化財の五翼放射状舎房

博物館網走監獄にある建物の中でも、この獄舎が一番有名ではないでしょうか。
長く伸びた5棟が交わる中央に見張り室を置き、少人数で監視できるという点が特徴です。
雑居房126室、独居房100室がありました。

実際に網走刑務所で使われていたものを移築復元しています。

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木造なので中はとても寒かったと思われる。

五翼放射状舎房の内部
天井に明かり窓が設置されているため比較的廊下は明るいものの、狭い房の中はなんとなくどんよりとした空気が漂っていました。

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ガイド中だったので、じっくりと写真を撮ることができなかった。

昭和の脱獄王、白鳥由栄(しらとりよしえ)が今にも脱走しようとするところを再現。

網走刑務所からの脱獄では、手錠と監視口に味噌汁を地道に吹きかけていき、塩分で鉄をサビさせて見事に脱獄成功しました。名づけて「味噌汁作戦」といったところでしょうか。
それにしても、短気なのか辛抱強いのかよくわからない人です。

素行が悪く、強盗殺人や傷害致死で刑務所に入れられた白鳥由栄ですが、脱獄時にはなぜか紳士的で、看守を襲ったり人質をとったりすることはなかったんだそうです。

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体力と腕力は人並み外れていた。
強靭な肉体をまっとうなことに使っていればとも思う。

浴場

受刑者唯一の楽しみといってもいい浴場
とはいっても、湯船にゆっくりと浸かるということはできず、服を脱ぐ時間、身体を洗う時間などを分単位で管理されていました。

当時は6月〜9月まで月5回、それ以外は月1回入浴できました。
うーん、入れた時は極楽のような気分だったことでしょう。
現在の刑務所では1日おきに入浴できるようになっています。

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背中一面に刺青をした受刑者も数多くいたようだ。

独立型独居房

当時の資料を元に再現された独立型独居房
最大34棟あった独立型独居房ですが、管理に手間がかかるとのことで、次第に使われなくなっていきました。

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狭い独居房にぽつんと一人なにを思う。

登録有形文化財の教誨堂(きょうかいどう)

教誨とは、受刑者の精神的な救済を目的とした活動のことをいい、現在でも行われています。

刑務官などが道徳的な講話をする一般教誨と、宗教的な講話をする宗教教誨との二種類あり、一般教誨の方は基本的に全員参加ですが、宗教教誨は信者の人のみが参加する自由参加です。

建物に目を向けると、天井にはシャンデリアが吊り下げられ、和洋折衷のモダンな建築様式となっています。

当時を再現するということで壇上には仏壇が設置されていますが、戦後は撤去されて慰問公演の場や体育館として使われました。

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体育館のような広さ。

教誨堂に並ぶ受刑者の作品
教育活動として、希望する受刑者には書写や絵画などのクラブ活動が許されていました。

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書道や絵画など、驚くほど上手な作品が展示されている。

産業物産館

お土産を売っている産業物産館
修学旅行生でとても混雑していたのであまり写真は撮れませんでしたが、定番のTシャツやおみやげのお菓子などたくさん売っていました。

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この出所せんべいをもらったら複雑な気持ちになりそう。

下の地図は拡大すると施設内の地図を見ることができます。

博物館 網走監獄を見学した感想

いたるところに受刑者や看守の人形が立っているので、建物の前に人が立っていると、「あれ、この人は人間かな?それとも人形かな?」と少し混乱してしまうほど。

受刑者の生活を見て思ったことはただ一つ。

絶対にこの中には入りたくない」ということ。
現在の刑務所ではもう少し待遇が改善されているのでしょうが、徹底的に管理されるというストレスに自分は耐えられそうにありません。

木造建築の建物は、とくに詳しくなくてもキレイだなー、すごいなーと感動しました。
和洋折衷のモダンな建物は一見の価値あり。

あいにくの大雨でしたが、修学旅行生のほかに、中国語を話す観光客もたくさんいました。
なんの建物かわかっているのかなと少々心配になりますが、旅行に来る海外の方は日本人よりはるかに物知りだったりするんですよね。

唯一残念だったのが、監獄食を食べられなかったこと。
時間的に行くことができず断念しました。
いつかまた行った時には必ず食べてみたいです。

展示施設のある敷地は面積がとても広く、外の展示物を見て回るとかなり歩くことになるので、歩きやすい靴を履いてください。

また、真夏以外は想像以上に気温が下がる日もあります。この日は10月でしたが、雨が降っていたこともあり、震えがくるほどの寒さでした。
秋冬じゃなくても、厚手の上着などなにか羽織るものを用意しておくことをおすすめします。

監獄の中なんて普段なかなか見れるものではありません。大人も子供も楽しめる博物館になっているので、オホーツク旅行のプランに加えてみてください。

網走市民には市民割引が適用されます。自分が住んでいる街の歴史を知るということは、とてもいいことだと思いますので、ぜひ特典を使って行ってみてはいかがでしょう。

博物館 網走監獄の情報&アクセス

名前 博物館 網走監獄
住所 〒099-2421 網走市字呼人1-1
電話番号 0152-45-2411
ホームページ http://www.kangoku.jp/
開館時間 5月〜9月:8:30〜18:00
10月〜4月:9:00〜17:00
最終入館は閉館時間の1時間前まで。
定休日 年中無休
入場料 ・大人:1080円
・大学生・高校生:750円
・小・中学生:540円
・団体割引:20人以上2割引き
・福祉料金:540円
・網走市民割引:2割引き
・インターネット特別割引:こちらの画面を見せる
最寄り駅 【JR】網走駅(徒歩:約40分、車:約7分、バス:約10分)
札幌〜網走(車:4時間30分、JR:5時間20分)